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黒湯 鷹の湯 酔人三吟
平成丁丑年 水無月(1997/6)
旅立や 桜桃のつや 含みつつ
三絃
しら髪いさむ みちのくの坂
比良
いざともに あしたもけふの ごとくして
山人
尻のポッケの 馬券一枚
三絃
見上ぐれば 空に烏の 鳴きて舞ふ
比良
黒をば白と 言ひくるめたり
山人
王朝の 闇に浮きたる 牡丹かな
三絃
初瀬にこもる 女人のこほしき
山人
山峡の 長き参道 川添ひて
比良
すみれの花を 摘みて下りき
三絃
草臥れて 乳頭の湯の 円居かな
山人
灯火小暗く いくさ歌聴く
比良
風蕭絛
葱
ねぶか
の茎の 青きこと
三絃
コモのみづうみ 漣の立つ
山人
時忘れ サイクリングに 打興じ
比良
赤ピケかぶる うかれ人あり
三絃
吾も亦 秋草の花と なりてしか
山人
虫の音しげき 薄野の夜半
比良
月見酒 遠き町まで 買ひに行く
三絃
狸出づとふ 山寺のあり
比良
秋萩の こぼれ落つるや 暮れの鐘
山人
陽だまり薄れ やや寒むの猫
三絃
長塀を 駈け去る子らの 声のして
比良
海の四角に 見ゆる路地先
三絃
盆梅を 命とたのむ 大家かな
山人
また縁に立ち 星を占ふ
比良
老残や 宿便の苦を かかへつも
三絃
宗匠どのの やまひ篤かり
山人
入生田の 枝垂れ桜も ひとり見て
比良
ネオンの街の 暖簾をくぐる
三絃
友来る たかるかおごるで 大違い
山人
いづれにしても 楽しからずや
比良
獺や 遊び疲れて 眠りをる
三絃
藤の花房 しなひ長くて
山人
掛樋水 日がなしただる 裏の木戸
比良
虻の羽音の しばしやみけり
三絃
酔人
元都立高校国語科
の教員だった仲良し三人組
誰かが古希を迎えた頃、温泉宿で歌仙を巻いた